臨床薬学講座薬学教育学分野 教授 奈良場 博昭
薬学教育学分野の研究・教育について
薬学教育学分野は、平成28年に発足した薬学部の新たなグループです(発足時は薬学教育学科)。研究および教育に関して、新たな試みを発信しています。
■ 研究について
近年、細胞から分泌される小胞としてエクソソームが注目されています。エクソソームは直径50から150 nmであり、表面は細胞膜と類似した脂質や膜タンパク質で構成され、内部にはタンパク質や低分子量RNAを有し、細胞内のエンドソーム由来と考えられています。このエクソソームは様々な生命現象に関わり、病態とも密接な関係があると考えられており、細胞間のメッセンジャーのような役割果たしていると思われます。当分野では、これまで炎症性病態の解析を行ってきましたが、局所炎症を全身性の反応に広げる新規の生体内システムとして、エクソソームが果たす役割を解明しようとしています。これは既知の神経伝やホルモン、オータコイドと異なる新たな細胞間、組織間コミュニケーション方法と考えています。特に慢性関節リウマチなどの難治性疾患におけるエクソソームの役割を解明すべく、リウマチ様症状を発症するモデルマウスを用いて循環血中のエクソソームが含有するmicroRNAの解析を行っており、関節炎の発症に相関して発現量の変化する分子種の同定を行っています。将来的に、疾患の早期発見や治療法選択の判断に有効なバイオマーカーとしてエクソソームの存在を確立したいと思っています。
■ 教育について
薬学教育学分野では、低学年の体験型学習のオーガナイザーを務めています。1年生の早期体験学習では、グループワークを行いながら、附属病院、調剤薬局、介護施設、ドクターヘリ、7テスラMRI、研究室などの見学、更に調剤や体験学習を行っています。これらを通して、1年次より薬学を学ぶことの意義と薬剤師の役割を自覚させ、各自の成長を促しています。また、2年次の早期臨床体験の一部として、東日本大震災における沿岸地区の被害や復興の現状を把握し、災害時の薬剤師の役割を考える試みを行っています。この際には、学生は3カ所(大船渡と陸前高田、大槌と釜石、宮古と田老)に分かれて現地を訪れ、薬剤師や行政の担当者から直接話を聞くとともに各地の震災の跡や復興の現状を見学しています。これらの体験型学習には、薬学部および学内の多くの教員や医療施設、薬剤師会、行政職員の協力をいただいております。本学の独自性のある科目として、今後も深化させていきたいと思います。
現在、当分野は、教員1名、研究助手1名、6年生5名、5年生1名、4年生4名が在籍しています。今後も明るく楽しい部署でありたいと思っています。